メタは大減益、支出急増、株価急落。ザッカーバーグ氏の「エモいCM動画」は事態打開の役に立たない

メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)は先週、デビッド・ボウイの名曲『ファイブ・イヤーズ』を広告音楽に起用したコマーシャル動画を公開。AIに対して懐疑的ないし批判的な「一部の人々」の見方に断固として反対する、私たちを楽観主義者と呼ぶなら呼べばいい、と視聴者に語りかけました。
メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)が注目の第2四半期(4〜6月)決算を発表しました。 売上高は前年同期比28%増の608億100万ドル。ほぼ広告事業だけ(98%)でこれだけ稼ぐのは、さすがマグニフィセント・セブンの一角を占めるメガテック企業。 しかし、営業利益は8%減の187億7500万ドル、営業利益率は12ポイント減の31%。純利益も14%減の158億4800万ドルと、AI投資をめぐる投資家の懸念をそのまま可視化したような数字でした。 総費用は55%増の420億2600万ドル。主に(内訳の)研究開発費が67%増とふくれ上がった結果であり、上記の減益もさもありなんです。結果として、フリーキャッシュフローは第1四半期(1〜3月)の123億9000万ドルから94%減り、7億8400万ドルまで落ち込みました。 先週末に決算を発表したテスラ(Tesla)とアルファベット(Alphabet)は、いずれもフリーキャッシュフローが赤字に転じており、それに比べれば......という見方もあるでしょうが、メタの場合はAIインフラ投資から直接的な事業収益を生み出せておらず、その意味では他のメガテック企業以上に苦しい台所事情と言えるかもしれません。 いずれにしても、第3四半期以降の収益が順調に伸びれば問題はないのでしょうが、今回発表した売上高見通しは610億〜640億ドル、中央値はブルームバーグ集計の市場予想を下回っています。それでいて通期の設備投資計画は1300億〜1450億ドルと、大筋に変化はありません。 株価は決算発表後に急落し、説明会直前の7月29日終値に比べて約8%安い水準で取引されています(7月30日終値時点)。 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は果たしてこの困難な状況を乗り切れるのでしょうか。名門フィリップス・エクセター・アカデミーでラテン語を学んでいた高校時代からずっと憧れだった歴史上の偉人、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスについて、ザッカーバーグ氏は過去にこう熱く語っています。 「基本的には、過酷極まりないやり方で、200年にわたる平和の時代(いわゆるパックス・ロマーナ)を築いたのです。そして、それはタダではありませんでした。一定の犠牲を払わねばならなかったのです」 さて、そんな難しい舵取りを迫られているザッカーバーグ氏のここ数日の様子を見て、シリコンバレー取材歴の長いピーター・カフカ記者が極めて建設的な提言を記事にまとめています。メタの決算をより深く読み解くための背景情報もふんだんに盛り込まれているので、内容をここで紹介させてください。 デビッド・ボウイの名曲に乗せて 多くの米国人がAIに対して強い懸念を抱いています。マーク・ザッカーバーグ氏はこの空気を変えられるでしょうか。 同氏が最近始めた広告キャンペーンはまさにそこに狙いがあるようです。メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)は先週、デビッド・ボウイの名曲『ファイブ・イヤーズ』を広告音楽に起用したコマーシャル動画を公開。AIに対して懐疑的ないし批判的な「一部の人々」の見方に断固として反対する、私たちを楽観主義者と呼ぶなら呼べばいい、と視聴者に語りかけました。 7月28日火曜日には、ザッカーバーグ氏自らウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)に寄稿。「スーパーインテリジェンス(超知能)は私たちが生きている間に目撃する最も大きな技術的進歩となる」との見方を示した上で、それが「新たな自己実現の時代を切り開き」「将来的に雇用を増加させ」ると強調しました。 同氏はその後、フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)やニューヨーク・タイムズ(New York Times)の記者たちに直接電話をかけ、寄稿の中身と同じ主張を繰り返した模様です。 翌29日に行われたメタの第2四半期決算説明会でも、やはり同じ趣旨の発言がザッカーバーグ氏からありました。同社のAI関連事業について、取り組みを続けることが「自分たちは世界のすべての人々のためにポジティブな未来を築いているのだという楽観を抱かせてくれるのです」と、同氏は投資家に向けて語っています。 オープンAIとアンスロピックへの不満 こうしたザッカーバーグ氏の挙動からは、二つの事実が読み取れると思います。 第一に、他のAI関連事業を手がける企業の経営者たちと同じように、ザッカーバーグ氏も米国内におけるAIに対する反感の強さに面食らっているようです。同氏を含めたどの経営者も、AI業界にはもっと巧みな広報戦略が必要との認識は共通していて、至らない部分にはあえて触れず、まずはもっと良い部分を売り込むべきと考えているのです。 第二に、多くのAI業界関係者と同じように、ザッカーバーグ氏もまたオープンAI(OpenAI)とアンスロピック(Anthropic)に対して苛立ちを募らせているようです。 前者を率いるサム・アルトマン氏と後者を率いるダリオ・アモデイ氏はいずれも、AIが大規模な雇用喪失を含めた深刻な社会的混乱を引き起こすと警鐘を鳴らしてきました。業界の中には、巨額の資金調達や評価額の積み上げを目指すそれぞれの野心を正当化するため、両氏がAIのリスクを誇張していると見る向きすらあります。 ザッカーバーグ氏は前出のウォール・ストリート・ジャーナル寄稿で、「AI開発に関わる多くの人々の言説がこれほどまでに悲観的な響きに満ちていることに驚きを禁じ得ません。AIが人間の仕事をことごとく奪い、人間の存在意義を深く損なうと心底考えているのであれば、そんな未来をわざわざ急いで築こうとする必要はないのであって、そのあたりが私には理解不能です」と指摘していますが、それはまさにアルトマン氏とアモデイ氏に向けられた言葉でしょう。 ザッカーバーグ氏なり、メタ社内の誰かなりが、AI業界にとって最良の代弁者と言えるかどうかはここでは脇に置くことにします。ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2025年初頭に行った世論調査で、18歳以上の米国人の67%がザッカーバーグ氏にネガティブな(好ましくない)印象を抱いていると回答した事実も、あえて無視することにしましょう。 そんなことよりはるかに大きな問題があります。誰であろうと、AIについてよりポジティブな感情を抱くよう米国人を説得することは本当に可能なのでしょうか。 確かに、アルトマン氏やアモデイ氏が、自分たちの開発しているテクノロジーが大規模な雇用喪失を引き起こす可能性があると、これほどまでに時間を割いて警告を発してこなかったなら、米国人はAIに対してもっとポジティブな感情を抱いていたかもしれません。 いまや本質的にはAI業界へと看板を掛け替えたテクノロジー業界が、トランプ大統領の再選以降、公然と忠誠を誓う露骨な行動を繰り返してこなかったなら、米国人の感情はもっと違ったものだったかもしれません。 しかし、いまさらたらればを言っても詮(せん)なきことです。 大々的に広告キャンペーンを打ったところで、すでに起きてしまったさまざまの出来事を忘れてくれるとは到底思えません。ここまで来ると、AIがすべての米国人にとって良い結果をもたらすと納得してもらうには、AIのもたらす恩恵を現在進行形で具体的に示して見せるしかないのだと思います。 なぜなら、いまのところAIのもたらす恩恵の大半は理論上の存在にとどまっているか、AI業界に勤務する人やAI関連企業に投資している人のような、社会のごく一部に偏在しているからです。つまり、あなたがサンフランシスコで自宅を売却しようとしているなら、AIの恩恵は目に見えて実感できると思いますが、そうでなければ、AIはせいぜい「いつか自分にとっても役に立つかも知れない何か」にすぎません。 メタが巨大データセンターの建設を進めているルイジアナ州リッチランド郡では今年、地元の教員たちに最大5万ドルの一時金が支払われました。メタが直接支払ったわけではなく、データセンター建設プロジェクトの誘致により急増した売上税を財源として、リッチランド郡が支給した形です。 この5万ドルという金額は、メタの(数十万ドルの報酬を受け取っている)エンジニアにとってはさほど大きな意味を持たないでしょう。しかし、リッチランド郡におけるその金額は、多くの住民にとって年収あるいはそれ以上に相当します。 だからマーク、もしあなたがAIやAI開発を通じて成し遂げようとしていることについて、人々にポジティブな感情を抱いてほしいと心から願っているなら、そういうことをもっとやればいいんだと思います。 あなたの部下として働く優秀な人材たちに最善の方法を考えさせてください。市民に直接給付するのも良し、自治体にまとめて資金を渡し、それを個人向けの小切手に振り替えてもらうのも良し。あるいは、学校や道路のような公共インフラを多数建設し、誰がその費用を負担したのかを明示するのも一つの手かもしれません。 どんな形であれ、とにかく早く着手すべきです。10年以上前、あなたは「安定したインフラとともに素早く行動せよ(Move fast with stable infrastructure)」を社内モットーに掲げていたではありませんか。 兎にも角にも、金を払う。そうすれば人々はAIが「いつか将来」ではなく「いままさに」自分たちの生活を良くしていることを実感できます。エモいコマーシャル動画や回りくどい寄稿より、そのほうがずっと大きな効果を得られると思うのですが、どうでしょうか。
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