独フォルクスワーゲン、次世代「アマロック」にEVとPHEVを設定へ――2029年登場、プラットフォームは未定

VW商用車CEOは、次世代「アマロック」にEVとPHEVを設定し2029年以降に投入すると明言したが、フォード製か中国SAIC製かというプラットフォーム選定は未定であり、これが電動化の性能を左右する。
関連記事 独フォルクスワーゲン、次世代「アマロック」にEVとPHEVを設定へ――2029年登場、プラットフォームは未定 フォルクスワーゲン(VW)商用車部門の最高経営責任者(CEO)であるステファン・メハ氏は、次世代(第3世代)のピックアップトラック「アマロック」に、プラグインハイブリッド(PHEV)および完全電気(BEV)のパワートレインを設定し、2029年または2030年頃に投入することを明らかにした。現行の第2世代モデルへの電動パワートレイン追加は見送られ、次世代での対応となる。しかし、電動化の性能を左右する次世代プラットフォームの選定については、依然として決定に至っていないと報じられている。 ■現行モデルの電動化見送りから、次世代での正式採用へ フォルクスワーゲン(VW)商用車部門の最高経営責任者(CEO)であるステファン・メハ氏は、豪自動車メディア「Chasing Cars」が公開したインタビューにおいて、2029年または2030年頃に登場予定の第3世代「アマロック」に、プラグインハイブリッド(PHEV)および完全電気(BEV)のパワートレインを設定することを認めた。現行のディーゼルおよびガソリンのラインナップは変更されないという。 メハ氏は「製品の競争力を維持するためには、PHEVやEVを含む柔軟なドライブトレイン戦略が必要だ。明確な計画はあるが、それは現行モデルではなく、次世代モデルでの話だ」と語った。 この発言は、これまでディーゼルとガソリンエンジンのみを展開してきたアマロックの電動化に対する、VWとしての最も具体的なコミットメントとなる。しかし、次世代アマロックがどのようなプラットフォームをベースにするかという重要な疑問は未解決のままである。 ■紆余曲折を経た電動化計画の復活 今回の発表に至るまでの道のりは平坦ではなかった。VWは2022年に電動アマロック(eAmarok)の開発が進行中であることを示唆していたが、2023年から2024年にかけて世界的なEV販売の伸びが鈍化したことを受け、現行モデルの販売規模では開発コストを正当化できないとして計画を一度断念していた。 この方針転換は2025年11月、VW商用車オーストラリアのブランドディレクターであるネイサン・ジョンソン氏によって「現行世代でのPHEVおよびBEVの導入計画は議論から外された」と公表されていた。 今回のメハ氏の発言は、前言を覆すものではなく、対象を「次世代モデル」に限定して電動化を確約したものである。現行の第2世代モデルは、南アフリカにあるフォードのシルバートン工場での生産契約期間を満了するまで、仕様変更なしで販売される。 ■プラットフォーム選定が握る技術的・地政学的鍵 次世代アマロックのプラットフォーム選定は、単なる製造委託先の問題ではなく、電動化の性能を決定づける重要なエンジニアリング上の選択である。 現行アマロックはフォードの「T6.2」ラダーフレーム(ボディ・オン・フレーム)構造を採用している。この構造は堅牢である一方、大型バッテリーを搭載するスペースの確保が難しく、積載量や牽引力に影響を及ぼす。フォードは「レンジャーPHEV」で11.8kWhのバッテリーを後部座席下に配置して牽引力を維持したが、EV走行距離は最大45kmにとどまる。 フォードとの提携を継続すれば、実績のある技術を利用できるため、メハ氏もフォードを「最有力候補」としている。 一方、もう一つの選択肢として、中国の上海汽車集団(SAIC)傘下のMaxus(上汽大通)が開発した「Terron 9」アーキテクチャが挙げられる。VWはアルゼンチンに5億8000万ドル(約945億4000万円、1ドル=163円換算)を投資し、2027年から南米市場向けのアマロックにこのプラットフォームを採用する予定である。SAICのプラットフォームはEV専用設計 of バッテリー統合が可能だが、中国国営企業への依存という地政学的リスクを伴う。 ■オーストラリアの厳しい排出ガス規制が背景に VWが電動化を急ぐ背景には、オーストラリアで導入される「新車効率基準(NVES)」がある。 NVESは、ライトトラックやバンなどのカテゴリーに対し、メーカー平均のCO2排出量目標を段階的に厳しくする。2026年の180g/kmから、2029年には110g/kmまで引き下げられる。現行のアマロックV6ディーゼルは222g/kmを排出しており、2029年の目標を大幅に超過している。 目標を達成できないメーカーには罰則が科されるため、VWがオーストラリアや欧州市場でアマロックの販売を継続するには、電動モデルの導入による排出量の相殺が不可欠となる。 ■先行する競合他社と中国勢の台頭 VWが模索を続ける中、市場はすでに動き出している。フォードは2025年に「レンジャーPHEV」をオーストラリアで発売し、3,500kgの牽引力と外部給電機能を備えて実用性をアピールしている。 トヨタは2026年5月に「ハイラックスBEV」をオーストラリアで発売(7万4,990豪ドル、約787万円から。1豪ドル=105円換算)。ただし、牽引力が約2,000kgに制限されるため、主にフリート(企業・官公庁)や鉱山向けに位置づけられている。 さらに、中国のBYDは2026年7月8日に欧州で「SHARK PHEV」の予約を開始(4万7,290ポンド、約993万円から。1ポンド=210円換算)。オーストラリアでも「Shark 6」がPHEVピックアップのベストセラーとなっており、中国メーカーが市場をリードしつつある。 ■次世代アマロックの展望 メハ氏の発言から、VWが描く「柔軟なドライブトレイン戦略」の全容が見えてくる。第3世代アマロックでは、ディーゼル、PHEV、BEVが同時に計画されており、エンジン車が引き続き主流となる一方で、PHEVやBEVが規制対応やプレミアムセグメントを担うことになる。 2029年から2030年の投入時期は、フォードとの現行生産契約の終了、およびオーストラリアのCO2規制の最終段階への移行時期と一致する。プラットフォームの最終決定は契約終了が近づくにつれて明らかになる見通しだが、その方向性が判明するのは早くとも2027年以降になるとみられる。 ■注目ポイントQ&A ●電気自動車(EV)仕様のVWアマロックはいつ発売されますか? VWは、2029年または2030年頃に登場予定の第3世代アマロックにおいて、PHEVおよびBEV(完全電気自動車)を設定することを認めています。現行の第2世代モデルには電動パワートレインは追加されません。 ●なぜ現行のアマロックにPHEVを追加しないのですか? 現行アマロックはフォードとの提携に基づいて生産されていますが、パワートレインの追加開発は契約に含まれておらず、VW単独で開発するには世界的な販売規模から見てコストが見合わないと2023〜2024年に判断されたためです。 ●オーストラリアで現在購入できる最適な電動ピックアップは何ですか? 2026年7月時点で、トヨタの「ハイラックスBEV」やフォードの「レンジャーPHEV」、BYDの「Shark 6」などが販売されています。ただし、完全なEV仕様でディーゼル車と同等の3,500kgの牽引力を備えたモデルはまだ存在しません。 ●プラットフォームの選択は電動化にどのように影響しますか? ラダーフレーム構造のフォード製プラットフォームを継続する場合、実績はありますがバッテリー容量に制限が生じる可能性があります。一方、中国SAICのプラットフォームを採用すれば、EV専用設計の大型バッテリーを搭載しやすくなりますが、中国国営企業への依存という地政学的リスクが生じます。
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