「ガス人間」怪演話題のこばやし元樹、小栗旬との出会いは「奇跡」 渡米から遅咲きブレイクまでを語る

小栗旬、蒼井優ら出演のNetflixシリーズ「ガス人間」(配信中)で「怪演」が注目を浴びている警部・吉田則夫役のこばやし元樹(52)。SNSでは「メチャクチャ爪痕残してた」「何者!?」と話題沸騰だが、出演のきっかけは小栗の推薦だったという。1990年代には渡米し、NYリー・ストラスバーグ演劇映画研究所で演技を学ぶなど下積みも長かったこばやしが、作品の裏側から現在に至るまでの道のり、人生が一変した小栗との出会いまでを語った。
小栗旬、蒼井優ら出演のNetflixシリーズ「ガス人間」(配信中)で「怪演」が注目を浴びている警部・吉田則夫役のこばやし元樹(52)。SNSでは「メチャクチャ爪痕残してた」「何者!?」と話題沸騰だが、出演のきっかけは小栗の推薦だったという。1990年代には渡米し、NYリー・ストラスバーグ演劇映画研究所で演技を学ぶなど下積みも長かったこばやしが、作品の裏側から現在に至るまでの道のり、人生が一変した小栗との出会いまでを語った。 「ガス人間」悪徳刑事役で減量、口を開けずに喋るアプローチ 「ガス人間」は、東宝とNetflixが初タッグを組み、東宝の特撮映画『ガス人間第1号』(1960)をリブート。生放送番組に出演中の大学教授の身体が突如として膨張し、爆死する前代未聞の事件が発生。そんな矢先“ガス人間”(UTA)を名乗る男が連続殺人を予告し、刑事・岡本賢治(小栗)や報道記者・甲野京子(蒼井優)らが謎に迫っていく......というストーリー。こばやしが演じる吉田は、主人公・岡本の上司だが、実は裏社会の組織と通じている悪徳刑事。反響に「嬉しさと同時に戸惑いもあった」というが、こばやしが台本を読んで初めに感じたのが「なぜ彼はこうなってしまったのか」という疑問だったという。 「監督に伺ったところ“お金、欲望に目がくらんで狂ってしまった人”だと。でも、初めから狂っていたわけではないと思うんです。捜査一課の警部なんてなろうと思ってもなれるものではないと思いますし、最初は正義、信念があったはず。これはあくまで想像ではありますが、役の原動力となったのは“劣等感”でした。例えば、小栗さんが演じる岡本は、吉田からすると恵まれているように見えたんじゃないかと。人望も厚くて、自分にはないものを持っている彼に嫉妬したんじゃないか。もっと強くありたい、もっと上に行きたいという思いはありながら正攻法ではなしえないので、誤った力を手にして道を踏み外してしまった......といったふうに彼のこれまでの人生を想像しました。基本的には弱い人間で、ナイフとかやたらと武器を装備しているのも、保身の表れだと思います」 役づくりにおいては肉体面も突き詰め、監督が衣装合わせの際に何気なく放った「頬がこけた感じだといいね」という一言から減量を決意した。 「「ガス人間」の前に「TOKYO VICE」という海外ドラマで記者を演じさせていただいたときに、薬物中毒者の設定だったので20キロ近く落としたんです。偶然ですがそこから(ドラマ)「ガンニバル」の飢えた農民とか痩せた役が続いて。「ガンニバル」でも「ガス人間」と同じ片山(慎三)監督とご一緒していたのですが、監督が“「ガンニバル」ほどではなくていいと思うけど、頬がこけた感じだといいね”とおっしゃったので、痩せていることで面白いと思ってもらえるのであればと、標準体重は65キロぐらいなんですけど常時55キロぐらいをキープするようになりました。「ガス人間」では上半身タンクトップ一枚になるシーンがあったので、強そうに見えるのに実はガリガリだったら面白いだろうなと思い、最終的に48キロぐらいまで落としました」 芝居の面で特に意識したのが「話し方」。口を開けずに話すという独特な話し方は、監督から提案されたものだという。 「撮影現場で監督に“何か特徴とかクセがあった方がいいですよね”とお話したところ、口を開けずにしゃべるというアイデアをご提案いただいて。常に歯を食いしばっているような。“それは面白そうですね”とやってみたんですけど、油断するとつい口が開いてしまうので、撮影に入る前からかなり意識するようにしていました。ちょっとしたコツをつかんだので(笑)、後半になるにつれ自然になっていったんじゃないかと思います」 小栗旬は「人生を変えてくれた人」 「あり得ない数のアクセス、コメントをもらった」と言うほどの反響を呼んだ吉田役。出演の経緯には、同じ事務所でもある小栗の助力があったというが、小栗との出会いは昨年配信されたドラマ「匿名の恋人たち」(Netflix)での共演。こばやしは「奇跡の出会い」だと振り返る。 「「匿名の恋人たち」で僕が出演させていただいたのはワンシーンだったですけど、設定としては心に問題を抱えた人々が集まるカウンセリングの場で、僕は怒りをコントロールできない人物を演じていて、小栗さん演じる主人公もそのメンバーの一人でした。撮影自体は2日間で、1日目に僕が怒りを爆発させる演技をしたところ、小栗さんがなぜか僕のことを調べてくださったようで2日目の撮影時に“以前ニューヨークにいらっしゃったんですね”と。もうビックリして。というのも、その時僕はNGも出してしまって相当落ち込んでいたもので。その数日後に「ガス人間」の吉田役のオファーをいただいたのですが、“小栗さんが主演で出られていますよね。もしかして何か言ってくださったんですか?”と後日伺ったら“吉田役とは言っていないんですけど、プロデューサーに面白い人がいると推薦はしました”と」 「小栗さんは人生を変えてくれた人。私の事を見てくれている人もいるんだ、しかも小栗さんが見てくれていたなんて、生きててよかった! と思いました。奇跡の出会いだったと思います」と笑みを浮かべるこばやし。そんな現在の基盤となっているのは、かつて単身ニューヨークに渡り、演技を学んだ経験だ。 デ・ニーロらを輩出した名門校で演技を追求 「大学時代、芸術学科の演技専攻だったのですが卒業間際に“このままでは何者にもなれない”“もっと深く演技を学びたい”と焦って渡米しました」というこばやし。門をたたいたのは、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマンら名だたるハリウッドスターを輩出したリー・ストラスバーグ演劇映画研究所。しかし言語の問題もあり、かなりの紆余曲折があったようだ。 「まず語学の問題。日常会話ができるぐらいのレベルになってから入学したんですけど、それでも全くついていけなくて。1回休学して英語の学校に行き直して、習得しながらなんとか食らいついていった感じです。リー・ストラスバーグでは未経験者でもきちんと演技の基礎が身につくカリキュラムが確立されているので、もう目から鱗というか、学ぶこと全てが新鮮でした。学生時代はいかに観客にウケるかといった表面的なことしか考えていなかったんですけど、リアリズム演技とは何たるかを学べた気がします」 在米時、特に忘れられない記憶が、友人の荒井琢呂(プロデューサー・映像ディレクター)と「俳優集団」を立ち上げたこと。 「自分たちで公演をうって無料でお客さんに来ていただくんです。同時に、エージェント、プロデューサーや映画監督といった業界人に、自分たちの履歴書を同封して招待し、売り込むわけです。それを何公演も重ねました。言語を超えたところでやれる自分の表現とは何なのか、世界のどこにいても役者としてやっていけるようになるためにはどうすればいいかということを追求していった結果、今があると思っています。リー・ストラスバーグで学んだことと、俳優集団で荒井と切磋琢磨したことは大きな財産ですし、現在の基盤になっていると思います」 なお、「俳優に衝撃を受けた映画」として、ロバート・デ・ニーロ主演の『キング・オブ・コメディ』(1982)、三船敏郎、仲代達矢、山崎努(※崎=たつさき)らが出演した『天国と地獄』(1963)を挙げている。(取材・文:編集部 石井百合子)
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