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データセンターは本当に一般市民の電気料金値上げの原因なのか?

データセンターは本当に一般市民の電気料金値上げの原因なのか?

AIブームに伴うデータセンターの増加を受け、アメリカでは大手テクノロジー企業が発電や送電にかかる追加費用を公平に負担すると約束する一方、一般利用者の電気料金に費用が転嫁されるのではないかとの懸念が広がっています。フロリダ大学でエネルギー研究ディレクターを務めるセオドア・J・キュリー氏が、データセンター向けの電力設備費がどのように電気料金へ割り振られるのかを解説しています。 続きを読む...

データセンターは本当に一般市民の電気料金値上げの原因なのか? AIブームに伴うデータセンターの増加を受け、アメリカでは大手テクノロジー企業が発電や送電にかかる追加費用を公平に負担すると約束する一方、一般利用者の電気料金に費用が転嫁されるのではないかとの懸念が広がっています。フロリダ大学でエネルギー研究ディレクターを務めるセオドア・J・キュリー氏が、データセンター向けの電力設備費がどのように電気料金へ割り振られるのかを解説しています。 It may be almost impossible to make data centers pay their ‘fair share’ of electricity costs https://theconversation.com/it-may-be-almost-impossible-to-make-data-centers-pay-their-fair-share-of-electricity-costs-283946 キュリー氏はデータセンターの電力需要が電力供給にかかる費用を押し上げている根拠として、アメリカ東部・中西部の広域電力網を運営するPJMの独立市場監視機関「Monitoring Analytics」がまとめた2025年版の市場報告書(PDFファイル)を挙げました。 PJMでは将来必要になる発電能力を確保するために発電事業者に対価を支払う「容量市場」を運営しています。Monitoring Analyticsは、既存および建設予定のデータセンターによる需要がなかった場合と比べ、2025~2026年・2026~2027年・2027~2028年の3回の容量市場オークションで、発電事業者が受け取る市場収入が合計231億95万5341ドル(約3兆7400億円)増加したと試算しました。この金額はPJM域内の利用者が負担する費用の増加分であり、一般家庭の請求額だけを集計したものではありません。 データセンターの需要に対応するために生じた費用を誰がどれだけ負担するかは、電気料金を設定する規制当局が決定します。キュリー氏によると、規制当局は発電所・送電線・変電所への投資や燃料費・人件費など数千に及ぶ費用項目を確認し、住宅・商業・産業といった利用者区分へ割り振ります。例えば、ある利用者区分が供給された電力の20%を使っていれば電力供給にかかる費用の20%を割り振るという形です。ほかにも利用者数や特定の時間帯に使った電力量などが基準になり、各区分の電気料金は割り振られた費用を回収できるように設定されるとのこと。 データセンターだけのために設置する設備であれば費用の負担者は明確で、例えばデータセンターと最寄りの変電所を結ぶ電力線ならデータセンターが費用を負担すべきだと判断できます。しかしデータセンターへ電力を供給するために変電所を増強したり新たな発電設備を確保したりする場合、設備はほかの利用者も使うため、費用が全利用者に配分される可能性があるとのことです。 費用の配分には、送電網全体の使用量が最大になった瞬間に各利用者区分が使っていた電力量を示す「同時ピーク需要」が使われる場合もあります。しかし、データセンターはコンピューターの処理量を自動で調整でき、需要がピークに達する瞬間だけ消費電力を減らすことが可能なため、ほかの時間帯に大量の電力を使っていても、同時ピーク需要に基づいて割り振られる費用を負担せずに済む可能性があるとキュリー氏は指摘しています。 さらに、電力設備は長期間使われる一方、計画されたデータセンターがすべて建設されるとは限りません。完成しても予測より消費電力が少なかったり、技術の変化によって短期間で使われなくなったりした場合、電力会社がデータセンターへの供給を見込んで投じた費用は、ほかの利用者へ配分されることになるとのことです。 一方、マンハッタン研究所のシニアフェローであるショーン・リーガン氏は、「データセンターが家庭向け電気料金を上昇させたとはいえない」との見解を示しています。 Data Centers Aren't Raising Your Power Bill. Bad Policies Are. https://cityjournal.substack.com/p/data-centers-arent-raising-your-power リーガン氏が根拠として挙げたのは、アメリカの電力研究所のアサ・ワッテン氏らが2015~2024年のデータを分析した査読前のワーキングペーパーです。 電気料金とデータセンターの数を単純に比べるだけでは、電気料金がもともと安い州にデータセンターが集まった結果を、データセンターが電気料金を下げた影響と取り違える可能性があります。そこでワッテン氏らは、現在の電気料金を基に策定されたものではない「1947年の州間高速道路計画」を使い、各州でデータセンターがどれだけ増えやすかったかを推定しました。データセンターの通信に使われる光ファイバーは高速道路沿いに敷設されることが多く、当時の高速道路計画が現在のデータセンターの立地に影響しているためです。 ワッテン氏らによる分析の結果、データセンター向け電力容量が2倍になると、住宅向けの平均小売電気料金は約3.5%下がると推定されました。また、住宅向け電力の利用者が多い州ほど大きく反映されるよう各州の増加率を平均すると、2019~2024年にデータセンター向け電力容量は160%増加したとのこと。ワッテン氏らは「容量が100%増えると料金が約3.5%下がる」という推定を160%の増加に当てはめ、データセンターが増えなかった場合より住宅向け料金が約6%低くなったと計算しています。 ワッテン氏らは、電気料金には発電所・送電線・配電網などの固定費が含まれると説明しています。既存設備に余力がある場合、大量の電力を継続的に使うデータセンターが加わると固定費をより多くの電力量に分散できるため、1kWh当たりの平均費用が下がるというわけです。 また、リーガン氏はコロンビア大学の世界エネルギー政策センターが2026年6月に公表した文献レビュー(PDFファイル)を挙げ、電気料金の上昇には送配電網の強化・拡張、災害からの復旧、燃料価格の変動、規制上の義務に伴う費用など地域ごとに異なる要因が重なっており、電力需要の増加だけでは説明できないと述べています。 ただし、ワッテン氏らは「将来の電力供給に制約が生じれば料金を押し下げる効果が逆転する可能性がある」と注意を促しており、リーガン氏は、データセンターの増加に合わせて発電・送電設備を増やすとともに、必要になった設備費をデータセンター自身に負担させる必要があると主張しています。 2026年7月、オレゴン州ではオレゴン州公益事業委員会が、電力会社「Portland General Electric」が申請した料金改定を承認し、これによりデータセンターなどの大口電力利用者向け料金が平均29.7%引き上げられる一方、住宅向け料金は平均1.3%引き下げられることになりました。リーガン氏は、こうした大口利用者向けの料金区分によってデータセンターの増加に伴う費用が一般家庭へ転嫁されるのを防ぐことができると述べています。 ・関連記事 送電インフラを必要とせず利益も得ない住民が10年で2500億円以上のコスト負担を受けることになるのはおかしいとメリーランド州当局が異議を申し立て - GIGAZINE アメリカのエネルギー当局がデータセンターへの電力供給を加速するよう電力会社に指示 - GIGAZINE AIデータセンターのブームが電力需要に拍車をかける、電力網拡張のために値上げを検討する電力会社も - GIGAZINE 電気料金についての国民の反応レポートを調査会社が公開、電気料金上昇は「データセンター需要」「会社の利益追及」が理由だと考えられている - GIGAZINE

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