加藤訓子が語る、偉大な作曲家スティーヴ・ライヒ(Steve Reich)の90歳を祝うステージでの新たな構想〈加藤訓子プロデュース MUSIC DAYS SERIES スティーヴ・ライヒ・プロジェクト《ライヒ90》〉 - インタビュー

加藤訓子が語る、偉大な作曲家スティーヴ・ライヒ(Steve Reich)の90歳を祝うステージでの新たな構想
ライヒ90歳を祝う〈ライヒ90〉。加藤訓子が新たな構想で挑むスティーヴ・ライヒ・プロジェクト、めぐろパーシモンホール大ホールに再び集結。 現在も創作を続け、今年10月に90歳を迎える偉大な作曲家スティーヴ・ライヒ。彼も信頼を寄せるパーカッショニスト加藤訓子は、このタイミングで新たなプログラムに挑む。中核に据えられたのは代表作のひとつ“ドラミング”。そこに近しい時期の“フェイズ・パターンズ”と“ピアノ・フェイズ”(ヴィブラフォン版)、更には21世紀以降に誕生した“マレット・カルテット”“カルテット”“ダンス・パターンズ”が選ばれた。加藤がこれまでソロや多重録音で切り拓いてきたライヒ作品を、今度は若い世代とライヴでパフォーマンスする。 「若い時にはアンサンブルの一員としてスティーヴ(・ライヒ)の曲を演奏してきましたが、現在のように自ら取り上げるようになったのは、〈ソロ〉で彼の曲をやりたいという思いから始まっているんです。カウンターポイント・シリーズを全部やって、その後“ドラミング”を全部ひとりで多重録音して......。そして若手奏者の支援・育成を目的としたinc.でも、若い子たちにライヒやクセナキスを演奏してもらいました」 inc.(アーティスト・インキュベーション)は今年でちょうど10年。その蓄積なしには今回の企画は生まれなかった。 「相模湖交流センターで10周年の企画をやったんですけど、育ってきた子たちがものすごいレベルに達していました。以前はゼイゼイ息を切らしながら追いかけていたのに、いまは平気な顔で最後まで演奏するんですよ(笑)。本当に彼らの身に力がつき、実を結んだ実感がありましたね」 それでも当初、加藤は若い奏者のアンサンブルに自分が入るつもりはなかった。 「世代が二世代ぐらい違いますし、私は混じらない方がいいと考えていたんです。ところがある時、欠員の代わりに私が加わらなくちゃいけなくなって。一緒に演奏したら、「あれ?、入った方が早い」と思うようになったんです。伝えたいことが、その場ですぐに伝わる。私はいわゆる先生というタイプではないですし、一緒にやってしまうのがいいんだと考えを変えました。現役で演奏できる以上は、アンサンブルで一緒にやりたいと思っています。今回はたぶん、すべての曲に私が入りますよ(笑)」 それでも“ドラミング”については、ひとりで全パートを録音した経験が活かされている。 「全部を自分でやることによって、すべてが見えるようになったんです。それをまた生身の人間に伝えていくと、昔アンサンブルで演奏した時とも、ひとりでやった時とも違う響きがするのが面白いですね。みんなでゆっくり練習すると、自分がその和音の中のどこにいるのかを感じながら演奏できるというのは得難い体験です」 一方で、1970~80年あたりのライヒ作品を中心に演奏してきた加藤にとって、近作は新たな挑戦であると語る。 「正直にいえば近作は当初あまり好きになれなれませんでした。楽譜をみると実は複雑で、パッと聴いただけでは良さが分からなかったんだと思います。でも若い子たちがみんなやりたがるんですね。それで、私もちゃんと向き合わねばと思って、自分のアルバムで取り上げてみたらまるっきり印象が変わってしまったんです」 その発見は、ライヒの〈現在〉を捉え直すことでもあった。 「古い作品だけをやっていてはいけないなと反省しました(笑)。ライヒは90歳になっても、少しずつでもずっと作曲を続けている。新しい作品に向き合ってみると和声感も展開も攻めているし、ロックバンドのようなノリもある。まさにライヴでやるべき作品だと思いました。今回のプログラムで一番新しい“カルテット”(2013)は以前一度やっていますが、今回こそ体にしっかり入るところまでチャレンジしたいんです」 ライヒ90歳を祝うこのステージは、彼女の過去の成果を振り返る場ではない。10年をかけて育ってきた奏者たちと共に、加藤自身が演奏を通してライヒ像を更に更新していく場なのである。自ら先頭に立ちながら、次の世代のなかへライヒの音を手渡そうとしている。 加藤訓子(Kuniko Kato) 現代音楽シーンで活躍する世界的な打楽器奏者。ロッテルダム音楽院にてcum laudeを授与され首席で卒業した最初のパーカッショニスト。三善晃、武満徹、スティーヴ・ライヒやアルヴォ・ペルトをはじめ、著名な作曲家や演奏家と数多く共演。古典から現代作品まで幅広いレパートリーを持ち、優れた音楽的洞察力と表現力、卓越した身体能力が創り上げる演奏スタイルが高く評価されている。国内外のグループへ参加後、ソロ活動へフォーカスする。第73回文化庁芸術祭優秀賞を受賞。特定非営利活動法人芸術文化ワークスの代表を務め、幅広い視点で地域の芸術文化振興に寄与する。 LIVE INFORMATION 加藤訓子プロデュース MUSIC DAYS SERIES スティーヴ・ライヒ・プロジェクト《ライヒ90》 2026年9月5日(土)東京・目黒 めぐろパーシモンホール 大ホール 開場/開演:14:30/15:00 ■出演 パーカッション・音楽監修:加藤訓子 パーカッション:青栁はる夏、悪原 至、戸崎可梨、富田真以子、藤本亮平、細野幸一、松野弥咲、濱仲陽香、古屋千尋、梅津愛華 ピアノ:川本嵐、谷口知聡 ピッコロ:木ノ脇道元 ヴォイス:丸山里佳、吉成有美子(ソプラノ) ■曲目 “2×4×6”“DRUMMING”
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